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このろくでもない、すばらしき国
ニッポンで奮闘する外国人シェフ物語 ~巻の壱~
名も知らぬ 遠き島より 流れ寄る 椰子の実一つ・・・
唐突で恐縮ですが、これは島崎藤村の有名な詞「椰子の実」の一節です。まさにこの詞のとおり、思いもよらない遠い国から“このろくでもない、すばらしき国”(ごめん、ジョーンズさん)へ流れ着いた外国人シェフたちにスポットを当て、その孤軍奮闘ぶりをシリーズで紹介します。
まずトップは、わたしたちJダイニングとも縁の深い、シチリアーノのサラヴァトーレさんです。
PROFILE
Salvatore Marco Maggio サレヴァトーレ・マルコ・マッジョ
1969年(昭和44年)10月11日 イタリア・シシリア生まれ
プーテッカ・ラ・ランテルナ(西梅田) オーナーシェフ
イタリアン・ファミリー
3人兄弟の長男として生まれる。彼のグランパ(おじいちゃん)は代々続くリストレンテ(飲食店)を経営していました。イタリアは日本と違い営業許可証を取得することが非常に難しく、そのためこの家業は代々受け継がれてきたのだそうです。
そのお店を幼いころから(皿洗い程度ですが)手伝っていたという、サラヴァトーレ。まあ、特に彼が家族思いという訳ではなく、ご承知のとおりイタリアではファミリーの結束は固く、マッジョ家の家族全員が総出で手伝っていたのですが。こういった家族の力に支えられたグランパは、6人の子供をつくり、そのまたこども(つまり孫たち)は18人!にもなりました。こんな今の日本では数少なくなった大家族のもと、ファミリーみんなで汗を流し、賑やかな幼少時代を過ごしました。
左から、三男の妻、ご本人、次男の妻、次男、奥様、三男です。
縁に導かれ極東の地ニッポンへ
そんな彼が単身、日本にやってきたのが、1999年のこと。ある会社がイタリア料理店をオープンするに際し、プロデュースをする人材として請われて、はるばる極東の地ニッポンまでやってきました。それから1年後、一気に頭角を現した彼はアンジェロインターナショナルという会社にスカウトされ、次々とイタリア系のお店をオープンして行きます。
当時のことを振り返って、彼は「死にモノ狂いだった。とにかく日本語もままならない。頼れる人もいない。結果がすべてだった。とにかくがんばるしかない。そんな状況だった。そのころに出会った人々に親切にしてもらったことを今でも忘れない。いろいろなことを教えてもらった。必要のないことも教えてもらったけどね・・(笑)」と今は楽しい思い出として語るけれど、わたしたちの立場に置き換えてみたら、わかると思う。言葉もあまり分からない、知人がいないところで、パワフルに仕事をしてちゃんと結果を出して行くことがどれだけすごいことかって。
縁に恵まれ念願の独立
そんな彼が念願の独立を果たしたのは、2005年9月1日のこと。阪急神戸線の門戸厄神駅前にバルカーロ・ラ・ランテルナをオープン。大きな石窯が店の大部分を占めているという特徴的なお店でいつも活気に溢れていました。彼のキャラは、一言でいえば大らかで、ノリのよさが身上。周りの人間を元気にしてくれるそんな感じ。(わたしたちが一般にイメージする“イタリア人像”に「まじめな働き者」というエッセンスを加えたらもっとピッタリかな)だから、お店に来るお客さんは、みんな元気をもらいに来ていたんじゃいなかなぁって思います。
その成功の陰で(ずっと内緒にしていたけど)、彼は想像を絶する苦労をしたそうです。日本人でさえ独立と言えば並大抵でないのに、来日6年で彼はそれを成しえました。商売は「ヒト・モノ・カネ」と言われますが、“良い人と巡り合い救われ、故郷イタリアの豊かな食材に恵まれ、良い金融機関にも巡り会い、今がある”とは、彼の本音だと思います。
そして、激戦地大阪へ!!
そして2007年9月8日、西梅田にプーテッカ・ラ・ランテルナをオープン。キッチンはオープンスタイルになっていて、厨房の活気がリアル&ストレートに伝わってくる設計になっています。ほとんどのワインがフルボトルで2,000円(!)という超価格破壊的な値段で提供していることでも有名。彼のコンセプトが「お客さんに喜んでほしい」というシンプルこの上ないものなので、わからないでもないけれど(そしてうれしいけど)、やりすぎでは・・?儲からないのでは・・?と思ってしまう。
しかし、その問いに対する彼の答えは「儲からなくていいんです。生活できるお金が少しあれば私は満足。それよりも私は、数多くの方にお店に来ていただき、私と出会い、私を理解し、私もお客さんひとりひとりを理解したい」とのこと。そしてさらに続けて、「私は、ラブを大切にしています。今の日本人にラブが不足していると思います。もっといろんな人と出会い、語り合い、ラブになることが必要。そう、私のテーマはラブです。だからよく失恋もします」。イタリア人らしい彼の言葉には、それこそラブが感じられた。彼の言っているラブとは友情(フレンドシップ)ということである。
(To Be Continued)
[お店情報]
料理 南イタリア料理
店名 Putecca La Lanterna
住所 大阪市北区梅田2-4-13阪神桜橋産経ビル1F
電話 06-6344-1313
(取材)宮田恭章
( 文 )白神泰彦
