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「繋いで!にっぽん食文化」大阪ダシ文化 道頓堀今井の受け継がれるもの ダシは大阪、いや・・い関西の食文化の宝もんや

いま、日本の伝統的な食文化が少しずつ失われて来ています。
四季折々の日本らしい季節感豊かな料理の数々は、
我々日本人が極々当たり前に享受してきました。
しかし、そこには料理人いわゆる職人さんの弛まぬ努力があることを
忘れられようとしているように思います。
そこでここでは、「繋ぐ」をテーマに古き良き日本の伝統的な料理を
守り続ける職人さんにスポットをあてたいと思います。

今回は、大阪は道頓堀にある「道頓堀今井」さんです。社長の今井徹さんと総料理長の山本直人さんにお話を伺って参りました。
それではまずお話を伺う前に大阪のダシについて少しお話しておきます。

大阪ダシ文化の由来

大阪の食文化は、「ダシの文化」だといわれます。その原点は水。関西の水は軟水で軟水は甘みがあり、どんなダシや素材にも合い、「ウマミ」を引き出すのに適していると言われており、大阪に昆布のダシが根付いたのも軟水だったです。大阪の水は、昆布の中の水溶性ウマミ成分であるグルタミン酸などを引き出し、風味豊かに仕上げるために欠かせないものだったのです。
一方硬水の場合、グルタミン酸と結びつくと灰汁になってしまうため、美味しいダシがとれません。関東で昆布ダシが根付かなかったのは、硬水のところが多かったこと原因だと言われています。実は植物性のダシが主張する料理を食するのは、世界的にも珍しいことなんです。料理大国といわれるフランスや中国でも味のベースは、動物や魚のもの。野菜を加えることもありますが、あくまでも臭みを消すためや香りを加えるためです。昆布がダシの主役になるということも、大阪のおいしさの要因です。

大阪のお醤油

大阪を含め関西のダシはうす味だといわれます。これは、味付けに薄口醤油を使用するからです。
薄口醤油は、色は薄いのですが、塩分は18%~19%。濃い口醤油の塩分は16%から18%なので、実は薄口のほうが、塩分が高いんです。大阪や京都では、この薄口を好んで使います。淡い色の醤油は、食材の色や持ち味、旨みがバランスよく引き出され、見た目にも美しい料理に仕上げます。薄口醤油は1666 年、兵庫県の龍野市で初めて作られました。龍野で作られる醤油は、京都や大阪で精進料理や懐石料理に使われるようになり、関西では一般的な調味料として定着したのです。

道頓堀今井の歴史

あまり知られていませんが、元々今井さんは楽器店からのスタートだった。その名も「今井楽器店」。そのままです。その後戦火で焼失し、1946年に「お蕎麦処今井」が開業。1972年には難波地下街「虹の街」(現在はなんなんタウン)に2号店をオープン。高度成長期にはホテルニューオータニへの出店など勢いを増しました。今の今井徹さんが社長になられたのは1995年今から15年ほど前のことです。今までお店というスタイルでの出店が経営スタイルであったのを今井徹さんは少し冒険をしました。初めて百貨店への出店を試みたのです。最初のころは、売り場でお客様に商品を手に取ってもらうことだけでも試行錯誤されたようです。「テイクアウトなどは商品のパッケージや見せ方にも様々な工夫をみなさんやってはります。一から勉強させてもらいながらやってきました。」と今井社長はおしゃっていました。大変勝手が違うところで随分苦労されたようです。しごく当然のようですが、いままでの厨房感覚とは違うオペレーションや衛生基準などの問題も、始めてのモノには大きな壁でした。しかし、そこはなにわの商人。「どないかなる」「皆で力合わせ、今まで培こうてきたノウハウを存分に発揮すれば、越えられん壁なんてあらへん!」と皆を引っ張っていきました。じわじわと今井ブランドのうどんは知名度を増していき、今や全国区。具材の素材力はもちろんのこと、その火付け役はやはり「うどん寄せ鍋」でした。具材の素材力はもちろんのこと、ベースとなるダシのうまさが際立ち、リーガロイヤルホテルやホテルニューオータニなどの有名ホテル店での人気を博していました。その人気が知名度を後押ししテイクアウト商品の人気を押し上げました。今では、道頓堀、リーガロイヤルホテル、ホテルニューオータニ、大丸心斎橋(テイクアウト)、大丸梅田(テイクアウト)にお店を構え、百貨店取引は大丸、高島屋、近鉄、阪急、阪神とほとんどの関西有名百貨店で取り扱われています。今井さんの出店は勢いでされてきたのではなく、老舗らしい地に足付けた、「味を落とさず拡大していく」という理想形であると思います。

今井徹という人物像

それでは、現在3代目社長の今井徹氏の人物像に少し触れたいと思います。
私は、活躍されている料理人の方とお会いすると必ずといってイイほど緊張するのですが、実は今井さんと初めてお会いしたときに、なぜか緊張した記憶がありません。ということは活躍されていなかった??ということではなく、おそらくそのお人柄がそうさせたのだと思います。今井さんは決して偉そうにされず、以前から仲良くしていたかのごとく錯覚してしまうほど、フランクに接していただける方なんです。こちらが恐縮してしまうほどに・・・。そしてとても優しい方だという印象があります。従業員の方を大切にされていて、従業員を食わしたってるという感覚は全くなく、みんな(従業員)がいてくれるから、自分がやってこれたと日頃よくおっしゃいます。

料理長が語る今井社長

今井本店の料理長である山本直人さんに今井社長についてお伺いしました。

  • 山本料理長:
  • 私は、先代からお世話になっており、社長のことは小さいことからよく存じています。頻繁にお店に来ては厨房をじぃっと眺めていたことを覚えています。坊ちゃんは、先代の跡を必ず継ぎはると思ったものです。とにかくよう店に来てはりました。
  • 宮田:
  • そうなんですか。普段、社長は従業員の方にどう接されていますか?
  • 山本料理長:
  • 社長は、いつも自ら‘おはようさん’とおしゃっています。昔も今も変わらず仕事というものはあいさつに始まりあいさつに終わるというでしょう。それを絶え間なく実践されています。声が小さく聞こえないときは‘聞こえな意味ないでちゃんとしなあかんで’ときちんとシツケされています。
  • 宮田:
  • 素晴らしいことですよね。
  • 山本料理長:
  • 従業員にとって一番うれしいことは、‘みんな(従業員)がいるからこそ私(社長)が社長をやっていることができる’ということを言ってくれていることだと思います。
  • 宮田:
  • そうですね。とても感動することです。渡辺さんは、ふだん今井で料理長を務められていることで一番気をつけていることは何ですか?
  • 山本料理長:
  • そうですね。やはり昔からの味を毎日きちんと安定させることですかね。久しく来られていなかったお客様に‘いつも変わらない味で美味しかった’と言われることが今井として最も大切なことだと思っています。これまでもそしてこれからも。
  • 宮田:
  • 毎日同じ味をというのは私たちが考えるより難しい大変なことだと思います。それではその今井のダシについてお話ししていきます。

 

ダシの種類の多さにびっくり!!

皆さんは、ダシの種類がたくさんあることをご存知ですか。
今井さんでは、1.かけだし 2.丼地 3.ザルダシ 4.吸い物ダシ 5.6.おでんダシ 7.冷やしニューメンダシ 8.冷やしソーメンダシ
ざっと伺っただけで8種類のダシを分けてとっている。えっ?と言う感じを感じました。一番出汁、二番出汁は和食の世界では有名ですが、それぞれの料理に合わせてワザワザ分けてダシをとっているとは・・。
お醤油などの分量を調整してそれぞれ作っていくのかと思いきや、最初から鰹や昆布のバランスを調整しているとのこと。さすが今井さんと思いました。ものすごくこだわられていて、きつねうどんのお揚げを炊くときは昆布を使わずサバのみであるなど、豆情報も教えていただきました。

ダシを極める

ダシを極めるとは?どういうことかを今井社長に伺いました。

  • 今井社長:
  • 素材です。どれだけ技術が長けていても、素材が悪かったら、ええダシはでまへん。良い素材選びが良いダシづくり のほとんどです。もちろん、きちんとした技術があるのが前提ですが。
  • 宮田:
  • なるほど。素材選びがダシの命なんですね。
  • 今井社長:
  • そうです。だからわしらだけでええダシは作れまへん。ダシにとって最適な昆布、鰹節などを常に高品質で提供してくれる生産者の方々がおってくれるから、美味しいダシが作れますねん。
  • 宮田:
  • なるほど。様々な方々に支えられて今井のダシは成立しているんでね。しかも長い歳月ずっと変わらず、同じ味を提供されていることが素晴らしいと思います。
  • 今井社長:
  • 最近は、良い素材を手に入れることが昔より格段に困難になってきてますねん。たとえばわしら、昆布は北海道の天然もんを使こうとりますねんけど、最近は天然もんを取りはる人が減ってしもて、中々ええのが手に入りませんねん。天然もんは取るのがごっつい手間で、気候によってはええもんが取れへん時がありますねん。せやから、みな安定した養殖をするようになりまして・・・
  • 宮田:
  • 私も以前TV番組で天然昆布の漁師さんを特集した番組をみたことがあります。1年で収穫に適した時期が非常に短く、その時の気温によっては、成長しすぎて収穫しても二束三文になってしまうことがあり、非常にギャンブル性の高い仕事であると認識しております。天然と養殖はそんなに味が違うんですか?
  • 今井社長:
  • そりゃぁ違いまっせ。あまり詳しく知らはらへん素人さんでも天然もんの昆布でとったダシは美味しい、普段とまったく違うとわかるもんです。せやからわしら毎年、北海道を走りまわって、ええ昆布探してますねん。でもね、昆布だけ違いますねんで。どんこ椎茸も最近はええのんが少なくなってきてますねん。今まで産地だった場所の平均気温が2度上昇して、まったく取れなくなったりしてますねん。地球温暖化ですねんで。
  • 宮田:
  • みかんでそういう話を聞いたことがありますけど、椎茸なども影響しているんですね。
    ところで今井さんところで秋に毎年まったけうどんなるものを提供されていますよね。それはどんなおうどんなんですか?
  • 今井社長:
  • よう聞いてくれました。まったけうどんは私が考えたんですけど、豪快にこれでもかというぐらいまったけ入れてます。ここだけの話しまったく儲からん商品です(笑)。でも私はおもろいことが好きでお客さまがまったけうどんを頼みはって、一目みたときの驚きの顔が好きなんです。人を驚かすことが好きなんでかね。まったけうどん頼みはって、ちょこっとまったけがのってても美味しそうに感じまへんやろ?

最後に

  • 宮田:
  • なるほど。私も以前から興味は持っていたんですけど、そういうことだったんですね。
    それでは今井社長、これから料理人を目指す方や、いま料理人で頑張っている方々へ何かメッセージをお願いします。
  • 今井社長:
  • みなさん、料理というのは一筋縄ではいきません。技術だけで美味しいもんが作れるなんてありまへん。美味しいもんには、多くの人の熱き気持が終結してできてますのや。美味しい食材、美味しくする技術、美味しくする調理人、美味しい雰囲気、美味しくするホールスタッフ、何一つ欠けても美味しさは維持できまへん。せやから、うまくいかん時もある。せやけど何くそという気持ちが必要です。あきらめたらあきまへん。絶対にうまいもん作ったるねんという、熱い気持ちを常に持ってほしい思います。それと、美味しいもんは必ず自分のお金で食べなあきまへん。人に奢ってもらったもんはどんなもんでも美味しい。自分で稼いだお金を使って美味しいもんを食べることでいろいろなことが感じられると思います。
  • 宮田:
  • ありがとうございます。今回の取材を通して、今井さんのダシへの飽くなきこだわりは、私たちが想像する以上に深いものがあるということを知りました。そして今井社長のユーモア溢れるキャラクターと深い優しさを感じた時間でした。これからも老舗の味「今井」のダシを守っていってください。今井社長、山本料理長どうもありがとうございました。

[お店情報]

道頓堀今井
本店 大阪市中央区道頓堀1丁目7番22号
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